成年後見制度というとどういった印象をお持ちでしょうか?一般的には家庭裁判所が後見人等を選任し、面識のない後見人等が選ばれ、本人の財産を管理するというイメージが強いかもしれません。でも、これってなんだか、知らない人が家に上がってきて、家のことに口を出してくるような印象を受けてしまいますよね。それにより、『私たち家族には後見制度なんて必要ないよ』と思う方も多いのではないでしょうか。
事実、ひところは家族を後見人に選任しようとしても、裁判所が選んでくれないケースがありました。しかし最近では、対立関係にあるなどの例外を除けば、家族が後見人に選ばれないケースは稀になってきています。成年後見制度ができてから20年以上が経ちますが、何度か方向修正をしながら、より利用しやすいように変わってきているのです。
成年後見制度は、大きく分けると以下の2つに分かれます。
さらに、法定後見制度は本人ができることの状態により
という3つの類型に分かれます。
この類型については、医師の診断書及び本人情報シートという書類により家庭裁判所が判断しますが、家庭裁判所は必要であれば鑑定手続により本人の診断を行います。そのうえで、後見人等が資産管理等を行います。
専門職が後見人について横領事件を起こすなど、不正事例等の情報がニュースになることがあります。この点については、自分自身が専門職後見人という立場から、あるまじき行為であると感じます。これにより、成年後見制度は『悪』であるという印象をお持ちの方も多くいます。また、後見人が杓子定規にしか対応してくれないと耳にして悪印象を持つこともあるようです。
ただ、これから迎える超高齢社会において、安心して暮らしていける地域社会を作るためにも、成年後見制度を充実させていくことは欠かせません。政府も成年後見制度を適正に利用してもらうために法律を制定し、利用の促進を目指しています。当然、自分なりに生活を送っていけることが1番ですが、人生は長い。不慮の事故等、予測し得ないことも起こることがあるため、成年後見制度を正しく理解しておく事はとても意義があることだと思います。
当事務所では、資産管理はもちろんですが、後見人の本来の目的である「身上保護」を至上命題としています。「身上保護」とは、被後見人の「生活」「療養看護」に関する事務のことです。本人の生活拠点を探したり、必要なサービスの利用契約を結んだりすることで、本人がよりよく生きることができるようにします。成年後見は資産管理の面が重要視されがちですが、結論としては、本人のためにどのように資産を活用していくかということが重要だと考えています。当事務所は、公益社団法人成年後見人センター・リーガルサポートに所属し、2019年-2023年まで法人後見委員会担当副支部長を務めていおり、任意後見・法定後見において日々研鑽に努めておりますので、安心してご依頼していただけます。海老名市や周辺地域(綾瀬市・厚木市・座間市など)で後見を検討している方は、ぜひ、まちの司法書士事務所にご相談ください。
(参考)
中間検証報告書を踏まえた 取組の進捗状況について
~家庭裁判所における取組を中心に~
令和3年3月 最高裁判所事務総局家庭局
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000760232.pdf
【費用】
①法定後見の場合
依頼料 110,000円~(消費税込)(事案に応じて加算) 上記依頼料のほか、申立手数料、登記印紙代、切手代、戸籍等取得費用として1.5~2万円程度かかります。
②任意後見の場合
依頼料 330,000円~(消費税込)(事案に応じて加算) 上記依頼料のほか、公証人手数料、戸籍謄本等取得費用として3万円程度かかります。
Q.後見申立てにはどのような費用がかかり、誰が負担することになるのでしょうか。
A.後見申立費用は、
①申立費用、
②書類等の取得費用、
③専門家へ依頼した場合の手続き報酬
に分かれます。
①は裁判所に提出する印紙代、郵便切手代です。
②は,本人の権限を制限してしまう後見制度においては、本人の状況を確認するためいくつかの書類を提出することが求められています。本人の戸籍謄本、住民票の写し(又は戸籍の附票の写し)、医師の診断書などです。
①については本人の負担とすることが裁判上認められていますが、➁③については現行の制度では申立てをした人が負担することになります。
Q.裁判所へ後見申立を行ったあと、家族間で話し合いをした結果、申立を取り下げることになったのですが、可能でしょうか。
A.一度申立てをしてしまうと自由に取り下げはできず、裁判所の許可が必要になります。
Q.相続の手続きのために成年後見人が選ばれた場合、相続手続きが完了すれば後見人等の任務終了ということになるのでしょうか。
A.後見人等は、法的サポートを必要とする方に対し、家庭裁判所へ申立をすることで選ばれます。相続などの手続きを目的として後見人等が選ばれたとしても、ご本人様が後見制度申立ての原因となった症状を回復するか、本人が亡くなるまで後見人等としての任務は続きます
Q.後見申立をしようと考えています。父は子供(父から見て孫)の将来のために毎年お金を贈与してくれていたのですが、後見人が選任されても続けることはできますか。
A.後見人等の目的は,本人のために資産を活用することです。そのため、基本的には認められないことになりますが、入学祝いやお年玉など少額の贈与であれば、本人の過去の記録や裁判所との相談の上、支払いができることがあります。しかし、税金対策のようなものについては原則できないと考えた方が無難です。後見制度がはじまってしまうと、本人の意思を推測することが難しくなるため、定期的な贈与を検討する場合は、ご事情によっては予めとれる対策がある場合もあるので、一度当方までご相談ください。
Q.後見人等には必ず報酬が発生するのでしょうか。親族が後見人になるので報酬は不要だと考えています。
A.後見人等の報酬は請求することができるものであり、請求しないことも可能です。専門職が後見人となる場合は、まず間違いなく報酬が発生しますが、親族が後見人となる場合は、報酬を請求されない方もいらっしゃいます。
しかし、後見業務をしていない他の相続人の方とのバランスを考えると、報酬を請求した方がいいかもしれません。今のところ相続について寄与分が認められることは少なく,認められても少額のため,後見業務をしていない人のほうが得をすることになってしまうからです。申立て1年目は手続きが多いので報酬を請求するとか、労力を費やした年は請求するなど、一定のルールを決めることもできます。報酬に関する最終的な判断は裁判所が行いますので、公平性は保たれていると考えていいでしょう。
また、後見人に選ばれたあとで、自分ではできない難しい手続きを専門職へ依頼すると、場合によっては費用が自己負担になってしまうこともあります。そういったときのために,報酬を受け取ることについて検討の余地はあると思います。